「日本全国食べ歩かない」第14歩【福井県 早瀬浦】其の壱
2週連続で「食べ歩かない」の会でした。今回は「福井県 早瀬浦」です。
福井県美浜町にある早瀬浦を醸す三宅彦右衛門酒造さんは三方五湖という湖に囲まれた漁師町にある酒蔵です。のどかで風光明媚な場所にあります。
東京から行くとなると、新幹線で米原まで出て特急で敦賀まで行き、そこからローカル線に乗って行くのでかなり時間がかかります(汗)
そんな遠方から蔵の跡継ぎの三宅くんに来てもらいました。
今回のラインナップは早瀬浦特別純米・夜長月、特別純米・涼み酒、山廃純米、純米の4種類にスペシャルの1本。漁師町の酒らしくどっしりとした味とキレのある呑みごたえのある酒です。
福井の見どころのひとつでもある曹洞宗の本山の永平寺。その精進料理の中のひとつでもある胡麻豆腐が有名です。しっかり味の胡麻豆腐には鰹節のきいた出汁と山葵で。
胡麻豆腐は豆腐と名がつくものの、大豆を使っているわけではありません。煎った胡麻を擂り潰し、水を入れ漉します。それに葛粉を溶かし入れ、火にかけて練り上げて型に入れ冷やし固めたものです。非常に時間と手間がかかる料理です。
前菜 鯖なれ鮓 鯖へしこ 大根
若狭から京都までの道のりは新鮮な焼鯖を運ぶ大事な街道で鯖街道と呼ばれていました。その頃から若狭の鯖は有名でした。そんな中、保存食としてできたのがこの鯖のへしこです。鯖を塩漬けにしたあと、糠床につけ半年~1年ほど熟成させた珍味です。
かなりしょっぱい味ですが薄くスライスしてそのまま食べたり、軽く炙ったものをほぐしお茶漬けにするのが一般的です。香ばしい味わいは日本酒のアテに最高です。
鯖のなれ鮓はこのへしこを使いつくります。へしこを塩抜きしたあと麹につけこみ10~20日くらい熟成させたものです。麹の甘い香りと熟成された糠の香りが美味しいのですが、乳酸発酵なので好き嫌いはあるかと。
汁物 越前蕎麦 辛味大根 洗葱 鰹節
福井で蕎麦といえばこのスタイル。ぶっかけのおろし蕎麦です。冬でもこれが定番です。シンプルでいて飽きのこない味です。今回は辛味大根と普通の大根をブレンドして、ほどほどの辛味にしました。
割鮮 小鯛笹漬 山葵
福井のお土産ものの定番のひとつがこの小鯛の笹漬です。
今回はしっかりと酢漬けにしているお土産物とは一味変えて、サッと酢〆して笹漬にしました。笹のほのかな青い香りがいいですね。
其の弐へ続く…
酒と鮓 梅軒
「日本全国食べ歩かない」第13歩【熊本県 花の香】其の弐
割鮮 熊本馬刺 九州甘醤油 霜降バラ ふたえご 高尾根 玉葱 貝割大根 卸生姜
熊本といえばやっぱり馬刺!全国でもダントツの消費量です。
今回は霜降りのバラ肉に、ふたえご(三枚肉の骨なし部分)、高尾根(コウオネ・たてがみの下の脂部分)を熊本から送ってもらいました。それぞれに味わいが違っていて流石本場の馬刺は美味しいですね。そして馬刺には九州の甘い醤油を。馬刺にはこの甘い醤油がよく合いますね。
珍味 豆酩 辛子蓮根 一文字ぐるぐる
左下の豆酩(とうべい)という珍味は豆腐のもろみ味噌漬けです。かなり昔からある保存食だそうで沖縄の豆腐蓉にも似た感じですが、クセもなく味わい深く和風チーズのような味は酒のアテには最高です。
右下は一文字ぐるぐるという料理で、ひともじ(分葱)を茹でたものをくるくる巻き付けて酢味噌をかけたものです。この一文字ぐるぐるに使うサイズの葱が関東では手に入らないので今回は分葱で代用を。
左上は辛子蓮根。熊本を代表する郷土料理ですね。芥子のきき具合は造る店によって随分違いますが、今回はほどほどに(笑)
香物 阿蘇高菜
ぶえん鮓のぶえん=無塩のことで、新鮮な魚が獲れるので塩をしなくても美味しく食べれるということだそうです。鯛やこはだなどの新鮮な魚を角切にして酢〆し、椎茸や人参なども一緒に甘めのシャリに混ぜ込んだ鮓です。
香物は阿蘇の高菜漬け。阿蘇山の高菜は雪にあてて育てた高菜は福岡の高菜漬けとはまた一味違い、葉のしっかりした味わいがありすごく美味しい高菜です。
留椀 つぼん汁 鶏もも 大根 人参 里芋 牛蒡 豆腐 蒲鉾 蒟蒻 椎茸
熊本の人吉や球磨地方の郷土料理のつぼん汁。元々は深めの壺でつくられていたからこの名がついたそうです。いわゆるけんちん汁的な汁物ですが、かまぼこが入るあたりが九州って感じですね。お澄まし仕立ての醤油味などが定番ですが、今回は熊本の米麦ブレンドの球磨味噌を使いました。ほんのりと甘い麦味噌は西の方では定番の味噌です。
今回、神田さんの酒造りへの思いや、経営が倒れかけていた蔵の再生などのお話をしていただき、皆さん興味津々に話を聞かれそして花の香に舌鼓を打っていました。神田さんと一緒に二次会も皆さんと行き、ざっくばらんな話でこちらも盛り上がりました。
蔵のあるあたりはまだ熊本地震の時の影響があるそうで、先日の西日本の豪雨では至る所で土砂崩れがあったそうです。早く落ち着つくといいですね。
まだまだ小さな蔵元さんですが、じりじりと名前が売れてきているのでこれからいろんなところで見かけることも多くなると思います。是非、花の香の優雅な香りを楽しんでみてください。
神田さん、お忙しいところありがとうございました。
次回の「日本全国食べ歩かない」第14歩は明日9/1【福井県 早瀬浦】です。
酒と鮓 梅軒
「日本全国食べ歩かない」第13歩【熊本県 花の香】其の壱
先日「日本全国食べ歩かない」第13歩目【熊本県 花の香】さんの会を行いました。
花の香を醸す花の香酒造さんは熊本県の北部・和水町にあります。
今回のラインナップ、花の香・スパークリング雪花、純米大吟・和水、純米大吟・桜花、純吟・菊花の4種類。花の香の名前らしく香りのよい華やかな酒質のお酒です。
特にスパークリングには力を入れていて、瓶内二次発酵の元気のよい炭酸と爽やかな香りが特徴的です。今回はこのスパークリングでみんなで乾杯を。
六代目社長兼杜氏の神田清隆さんにお越しいただきました。神田さんは山口県のあの獺祭さんで修行をされたそうです。神田さんが戻ってから酒質が一気にUPして2年で今までの約10倍の生産量になったそうです。
そんな神田さんに蔵の話や酒造りの話を聞きながら、熊本の郷土料理を楽しんでいただきました。
熊本の北西部に位置する南関町発祥の油揚げがこの南関揚げです。元々は愛媛県の伊予松山の「松山揚げ」がこの地方に伝わって、そこから出来上がったそうです。
九州ではメジャーなこの南関揚げ。油揚げといっても関東の油揚げとは違い乾燥した状態で売っていて、戻して使ったり、そのまま味噌汁に入れて食べたりと用途はいろいろ。しかも食感が独特のシャキシャキしたような食感でこれが美味しいんです。
この南関揚げを油抜きして甘辛く炊いて稲荷鮓に。シャリの中には茎山葵の醤油漬と胡麻を。
吸物 太平燕(タイピーエン) 豚ばら 海老 烏賊 鶉玉子 レタス 玉葱 人参 韮 木耳 青梗菜 春雨
タイピーエンというこの料理は、元々は中国の福建省の料理ですが熊本で根付いて熊本市の中華料理屋では普通にメニューにもあり、学校の給食でも出るくらいメジャーな料理だそうです。
豚出汁や鶏出汁を使い、麺の代わりに春雨を入れて、具沢山の肉や野菜を炒めたものを乗せた料理です。本場熊本では揚げた玉子をのせますが、今回は鶉の玉子で。
ボリュームがありますが、麺ではなく春雨なのでサラッと食べれます。呑んだ後なんかには軽くていいですね~。
其の弐に続く…
酒と鮓 梅軒
「日本全国食べ歩かない」第12歩【高知県 土佐しらぎく】其の弐
割鮮 鰹塩叩き 茗荷 洗葱 芥子
夏の高知と言えば鰹。藁で炙るとスモークの香りがのり香ばしい叩きの出来上がりです。この時期の鰹の割にはずいぶんと脂ののった鰹でした。最近の高知での流行りの塩叩きで。
煮物 ごり玉子綴じ 笹がき牛蒡 三つ葉 粉山椒
ゴリ(ヨシノボリやカジカの子ども)をサッと牛蒡と一緒に炊いて玉子で綴じた、こちらも四万十や仁淀川周辺の定番料理。濃い味つけで甘辛にしてもご飯のおかずに美味しいですが、今回は薄味でゴリの風味を楽しめるように仕上げました。ゴリの骨のコリコリとした食感も味わいのひとつです。
津野山地区の郷土料理の豆腐の梅酢漬。よく水切りした豆腐を梅干を漬けるときにできる梅酢に10日ほど漬け込んだものです。塩分が強いので薄く切ってそのまま食べます。冷蔵庫などがないときの昔の保存食だったそうです。梅酢の酸味と塩分が酒のアテに良いですよ。
酒盗は高知を代表する珍味ですね。鰹の内臓の塩辛です。熟成して旨味ののった酒盗と一緒にクリームチーズで。ちなみに最近よく見かけるこの酒盗クリームチーズですが、25年ほど前に僕が考えた組み合わせなんですよ~。
飯物 こけら鮓 焼鯖 椎茸 人参 錦紙玉子 三つ葉 柚子酢
東洋町の郷土料理のこけら鮓。名前の由来は、こけら=木くずを散りばめたように見えるからとか、屋根を葺く「こけら板」に似ているからとか、家を建てた際に「こけら落とし」のお祝いに食されたとか諸説あるそうですが、とにかくお祝い事のときなどには食べるそうです。
焼いた鯖をほぐして、鮓酢の代わりにたっぷりの柚子酢(柚子の搾り汁)をシャリにまわして、何段にもなるように具材を挟み込んで層にして押し鮓にしたものです。柚子酢の風味とサッパリとした酸味に、鯖の塩分などが入り夏でももりもり食欲がでる味です。
留椀 ぬか味噌汁 鰹中骨 韮
焼いた鰹の中骨入りの味噌汁ですが、味噌と一緒にぬか漬けのぬかも入れて味をつけたものです。ほんのりと香るぬかの風味と韮の香りがクセになります。酒のアテにもいい感じの味噌汁ですね。
香々 がり 黄金生姜 新生姜
高知は日本一の生姜の産地です。国産生姜の半分近くが高知でつくられています。その高知のブランド生姜が「黄金生姜」です。他の国産生姜に比べ辛味と香りも強く、色も綺麗な黄色をしていて、繊維が細かいのが特徴。普段、梅軒のガリはこの黄金生姜をつかっています。今回は食べ比べとして新生姜でもガリを作りました。黄金生姜に比べて爽やかな香りと辛味です。
南国土佐と呼ばれるだけあって、高知の郷土料理は暑い夏を乗り切るための食事だったり、食欲増進のための味付けだったりするものが多いと感じますね。
そして土佐しらぎくさんのお酒はお客様の人気は山田錦と美潮でした。僕は個人的には地元用のたっぷり純米が好きなんですが。いずれにしろ、竜太くんの楽しい話で会のほうも楽しくできました。竜太くん、ありがとうございました。
次回の「日本全国食べ歩かない」13歩目は8/24(金)19:00~「熊本県 花の香」さんです。
酒と鮓 梅軒
「日本全国食べ歩かない」第12歩【高知県 土佐しらぎく】其の壱
毎日暑い日が続きますね~。熱中症予防に梅干がいいらしいですよ。ウチも土用の日に今年の仕込み分の梅干干しはじめました。
先日、「日本全国食べ歩かない」第12歩【高知県 土佐しらぎく】さんの会がありました。
今回のラインナップは土佐しらぎく純吟・山田錦、美潮、純吟・微発泡、たっぷり飲める純米の4種類に仕込み水も持ってきていただきました。米の旨味とほのかな香りのある酒質のお酒です。特に微発泡はこの暑い時期に氷を入れてロックで呑むのがオススメです。
今回は杜氏の仙頭竜太さんに来ていただきました。しらぎくさんとは竜太くんの奥さんのお父さんの時代からのお付き合いなので、もうかれこれ20年くらいになります。僕と竜太くんとはこの業界で数少ない同い年でして、沖縄での酒の会にも毎年来ていただいていて仲良くさせてもらってます。
先付 どろめとリュウキュウの酢の物 若布 卸生姜
どろめ=生しらすのことです。そしてリュウキュウ=はす芋です。
高知ではリュウキュウをよく食べます。アクのない生食できる芋がらと思ってもらえればいいかと。スライスやサッと茹でて酢の物や味噌汁なんかに入れて食べる夏野菜です。クセがなくシャキシャキした歯ごたえが暑い夏にサッパリとした感じで良いですね。
余談ですが高知ではどろめ祭りというお祭りがありまして、新鮮などろめが食べれるのはもちろんのこと、「日本酒の1升早呑み大会」もあります。お相撲さんが呑むような大きな1升の盃に入れた日本酒を一気に呑むんですが、優勝者の平均タイムは12秒ほどだそうです。
前菜 川海老と胡瓜の冷やし煮
こちらは四万十地方の夏の定番料理です。出汁を使わずに新鮮な川海老を酒と水に入れ、大きく育ちすぎた胡瓜と一緒に炊いて、少しとろみをつけたものを冷たい状態で食べます。川海老から出た出汁が胡瓜に浸み込んで夏らしい爽やかな味わいの煮物になります。少しつけたとろみも見た目に涼し気でいいですね。
前菜 心太 四万十海苔風味
高知でところてんというと、スーパーなどで味付けの出汁入りで売られています。酢の物というよりはちょっと濃い吸物くらいの味付けでして、柚子入りだったり、胡麻入りだったり、青海苔入りだったりと味もさまざま。酢醤油と芥子で食べる関東とはずいぶん違うんです。今回は風味の良い四万十産の青海苔をのせて。
吸物 津蟹こごり汁 リュウキュウ 茄子 豆腐 分葱
高知の川で獲れるツガニ(モクズガニ)は上海蟹の仲間で、濃厚な蟹味噌が美味しい蟹です。それを割って出汁に入れリュウキュウや茄子などと一緒に炊いて味をつけた吸物です。蟹味噌の味が出汁いっぱいに広がって濃厚な旨味の吸物です。
この時期から本当は漁が始まるんですが、先日の西日本の大雨の影響か入荷がまったく無かったので急遽、栗蟹で代用させてもらいました。
其の弐へ続く…
酒と鮓 梅軒