鯔(ボラ)と唐墨(カラスミ)
カラスミのシーズンがやってきました。カラスミとはボラの卵を塩漬にして干したもので、日本三大珍味のひとつと言われるものです。
元々中国からやってきたもので、最初はボラではなく鰆(サワラ)の卵で作っていました。江戸時代に長崎で大量に獲れるボラの卵を使うようになり、それが定着したんだそうです。
カラスミという名は中国(唐)の墨に形が似ていたから付けられた名だそうです。
台湾やイタリアでもカラスミとよく似たものがありますが、ほとんどはボラの卵ではないですね。やっぱり日本酒に合うのは日本のカラスミだと勝手に思っています。
酒の肴には最高の珍味ですね。炙っても美味しいです。
作り方はボラの卵を血抜き→塩漬け→塩抜き→干すというものですが、出来上がるまでに時間がかかります。結構な手間がかかるので値段が高いと思われがちですが、元々の仕入れ値からして高いんです。だいたい¥10,000/㎏くらいが相場でしょうか。本体の魚のボラ自体は卵を持ってないときはものすごく安い魚なんですが、この時期の卵持ちのメスは一気に相場が跳ね上がります。
ちなみに本体のボラはこんな魚です。防波堤付近に大量の群れをなして泳いでる姿をよく見かけます。
このボラですが実は出世魚(成長とともに名前が変わる魚)でして、ハク→オボコ→イナ→ボラ→トドと大きくなるにつれて名前が変わります。地方によってはこれとはまた違う呼び名になるところもあります。
「とどのつまり」という言葉はこのボラの最終形態のトドからきている言葉で、「トドから先はない」ということからできた言葉だそうです。
江戸っ子が粋な若い衆をいった言葉の「いなせ」もボラから来ている言葉です。江戸時代の魚河岸(日本橋)の若い衆で流行ったマゲの結い方がボラの若魚イナの背に似ていたことからついた名だそうです。漢字で書くと「いなせ=鯔背」となります。
これだけいろんな語源にもなっているボラですが、本体の方の味はちょっとクセがあって微妙です(苦)
酒と鮓 梅軒