酒と鮓 梅軒(バイケン)

武蔵小山の鮓(すし)割烹と日本酒の店です【住所】目黒区目黒本町5-16-3☎03-5708-5542 水曜定休

「日本全国食べ歩かない」第五歩 栃木県「開華」 其の一

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昨日は年内最後の「日本全国食べ歩かない」の第5歩目「栃木県 開華」さんの会でした。栃木県といえば日光や鬼怒川、あしかがフラワーパークツインリンクもてぎ…。食べ物なら宇都宮餃子に佐野ラーメンなどがメジャーでしょうか。

今回も観光パンフレットとともに旅気分を満喫してもらいます。

 

 

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今回のラインナップは開華の純米大吟遠心分離・純吟ひやおろし遠心分離・純吟ひやおろし・純吟ひやおろし・純吟自社水田ひとごこち・特別純米生もと・純米の6種類。遠心分離で絞った酒はなかなかやっている蔵元さんが少ないので、皆さん興味津々でした。

 

 

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今回開華の第一酒造さんから来てくれたのは相良くん。相良くんは元々、下高井戸の銘酒居酒屋「おふろ」さんで彼がバイトしていた大学生時代に会ってからの付き合いなので、かれこれ20年くらいでしょうか。今じゃすっかり蔵の人になってます(笑)

当時は若かったので、よく一緒に呑んではハチャメチャなことをしてました。お互いすっかりオッサンになりましたな。

 

 

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さて、今回の栃木の郷土料理は…

食前酒 いかんべ割り  開華純米+レモン牛乳

勝手に命名したこの日本酒カクテル。いかんべとは栃木の方言で「いいでしょ!」的な言葉。ご当地ドリンクのレモン牛乳と割って、みんなで乾杯!

 

 

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これがそのレモン牛乳。味のあるいいパッケージです。久しぶりに呑みましたが、「あれっ、こんなに甘かったっけ?」が素直な感想ですが、日本酒で割るとスッキリと呑めます。

牛乳と言ってますが、どちらかといえばピルクルやマミーに近い乳飲料です。しかもレモンとうたいつつ無果汁(笑)。どこか懐かしい駄菓子屋の味的な感じでクセになります。栃木のコンビニだったらだいたいどこでもでも売ってるので是非。

 

 

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先付 いとこ煮 南瓜 小豆

   とちおとめ 酒粕クリームがけ

いとこ煮は栃木に限らず地方の山間部に行くとたいていある郷土料理です。出汁に火の通りにくいものから「おいおい」入れていくので「おい=甥」とかけていとこ煮と呼ぶようになったそうです。少し醤油をきかせた甘めの味付けで。

 

とちおとめは栃木を代表するフルーツですね。今じゃ「福岡のあまおう」とシェアトップ争いが激しいことになってます。あまおうに比べとちおとめの方がフルーツらしい酸味があり、サッパリと食べられます。今回は酒粕を牛乳でのばしたクリームをかけて。酒粕の風味でコクがでて相性イイ感じですよ。

 

 

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前菜 しもつかれ 桜鱒 煎大豆 大根鬼卸 人参 薄揚 酒粕

栃木県を代表する超微妙な料理といわれる「しもつかれ

元々は旧暦の初午の日(2月下旬頃)にお稲荷さんにお参りする際に、何もお供え物がないのも申し訳ないと、冬場の限られた食材の中で作られた料理です。宮城県の郷土料理「あざら」とよく似た立ち位置の料理です。

本来は正月の残りの荒巻鮭の頭の部分と、節分の残りの煎り大豆と酒粕、人参、大根鬼卸などと一緒に炊き、味付けは荒巻鮭の塩分のみでした。現在は昔の荒巻鮭ほどガッチリと塩をしたものは少ないので、そこまで塩味がでません。なので今は作るときに塩を足して味付けします。さらにここに酢を入れる方も多いです。その酢を入れた味が他県の人間からすると超微妙と言われてしまう味付けなんです。特に地元のおばあちゃんが作るしもつかれの味はかなり攻めてます。酢の酸味+酒粕の香り+鮭の頭の若干の生臭さ=ヤバイ食い物の出来上がりです。栃木の年配の方は、このしもつかれ(冷たい状態のもの)を温かいご飯の上にのせて食べるのが最高とのこと。なかなか思いつかないトリッキーな組み合わせです。

なんかディスってる風ですが、そんなことはないんですよ。歴史的背景を感じる料理で素敵だと思っています。海のない栃木では昔は荒巻鮭なんかはすごい御馳走だったのだと思います。その食材を無駄にせず、お供え物にしようとした先人の知恵と、物を大事にする心が素晴らしいと思います。

 

今回は初めてしもつかれを食べる方もいるので、攻めたしもつかれにはせずに、かなりあっさり味に仕上げました。鮭の頭の代わりに桜鱒の身を焼いてほぐし、北海道産の鶴の子大豆の煎り大豆を水で戻して薄皮を向き、大根鬼卸と京人参、焼いた薄揚げとともに塩とかるく醤油、味醂、砂糖で味付けし酒粕でサッと炊きました。酢はほんの少しだけ入れてます。本場のしもつかれが好きな方には物足りないかもしれませんが…。サッパリと上品で香ばしい香りが酒のアテに丁度良く仕上がりました。

 

しもつかれの名前の由来は栃木の旧地名の「下野(しもつけ)」からきているとか、「酢につかる」が訛ってしもつかれになったとか、諸説あるようです。「七軒の家のしもつかれを食べると病気にならない」などと言われているので、ご近所さんと分けたりして食べるそうですが、皆さんウチのしもつかれが一番美味しいと言うそうです(笑)

…其の二につづく

 

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