酒と鮓 梅軒(バイケン)

武蔵小山の鮓(すし)割烹と日本酒の店です【住所】目黒区目黒本町5-16-3☎03-5708-5542 水曜定休

「日本全国食べ歩かない」第九歩 「秋田県 一白水成」其の弐

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第九歩目の「日本全国食べ歩かない」の「秋田県 一白水成の続きです。

焼物 鰰塩魚汁かやき  鰰 帆立 白葱 三つ葉 大根鬼卸

秋田には「かやき」という料理があります。かやき=貝焼きの訛ったものだそうで、一人用の小鍋のようなものです。今回は秋田名物・鰰(ハタハタ)を塩魚汁(しょっつる)でかやきにしました。

冬の秋田の海は非常に時化(シケ)て昔は中々漁ができなかったそうです(今でも冬はシケますが)。そんな荒れた冬の海、雷の鳴る季節に沿岸までやってくる魚がこのハタハタだったそうで、当時の秋田の人たちにとっては大変貴重な魚だったそうです。「雷さま=神さまのもたらしてくれる魚」という意味で漢字で「鰰」と書くようになったんだとか。

今回味付けはしょっつるのみなので、強い塩分を中和するために大根の鬼卸をたっぷりと乗せ、そこからでる水分で丁度良い塩加減になるようにしました。香ばしい香りと塩味が日本酒によく合います。 

秋田県日本海に面している割には、漁獲高はかなり低いのだとか。港が少ないことがその原因らしいです。しかしハタハタだけは日本一の漁獲高なんです。

 

 

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こちらがしょっつる。ハタハタで作った秋田名物の魚醤です。非常に濃い塩分ですが、ナンプラーニョクマムと同じような独特の香ばしい香りがクセになる調味料です。

 

 

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煮物 きりたんぽ鍋 比内鶏もも肉 舞茸 芹 きりたんぽ 金柑卵           白葱 春菊 豆腐

ご存知、きりたんぽ鍋です。秋田の郷土料理では一番メジャーかもしれませんが、意外とどんなものか知らない人が多いみたいです。きりたんぽは炊いた飯米を多少粒が残る程度に潰し(半殺しにするとも言います)、木の棒にちくわのようにくっつけて囲炉裏で焼いたものです。

鍋の出汁は比内鶏でとった鶏スープを使い、舞茸と芹が必ず入ります。濃厚な比内のスープに舞茸から出た出汁が混じって複雑さが出ると、これぞきりたんぽ鍋って感じです。きりたんぽは鍋に最初から入れてやわやわにする派と、後から入れてちょっとしっかり食感派と各家庭で分かれるのも面白いです。

今回は比内鶏の内臓卵(きんかん卵)も仕入れたので、醤油漬けにしてサッとしゃぶしゃぶ風にして食べてもらいました。口に入れて卵を割ると濃厚で新鮮な卵のコクがあふれ出てきます。

 

 

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お香々 いぶりがっこ 大根鉈漬

いぶりがっこは元々は冬の保存食として大根を囲炉裏の上に吊るし、煙で燻されたものをぬか漬けにした燻製たくあんです。今では囲炉裏など中々ないので桜のチップなどで燻製にしているようです。 たくあんよりもパリパリした食感とスモークの香ばしい香りの漬物です。

鉈漬(ナタづけ)は大根をナタでざっくりと割り、浅漬けにして甘酒で漬けたものです。ナタで割ることにより、断面がザラザラになるので大根の表面積が大きくなり漬かりやすくなるという、非常に理にかなったお漬物です。ほんのり甘い甘酒の風味が子供にも喜ばれるお漬物です。

 

 

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飯物 稲庭うどん

秋田県稲庭町で造られた手延べのやや平打ち乾麺の稲庭うどん。絹のような爽快なのど越しのうどんですね。今回は鍋の〆に入れてみました。

 

 

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甘味 だまこ餅

だまこ=だまっこ(お団子)という意味のお餅です。地域によっては、先ほどのきりたんぽのように米を潰してを丸めたものをだまこと呼ぶところもありますが、僕の中でだまこ餅と言えば能代銘菓のこれです。中に黒ごまの蜜がたっぷり入っているので、噛み切って食べようとするとブピュっと中から蜜が飛び出してくるので、食べる時は必ずひとくちで食べるのがこのだまこ餅の食べ方です。濃厚な黒ごま蜜がお茶うけに最高です。

 

 

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今回来て頂いた一白水成・福禄寿酒造の社長の渡邊康衛くん。会の翌日は朝一で秋田帰りという忙しい中のご来店ありがとうございました。

福禄寿酒造さんはもうすぐ330周年だそうで、調べたら創業は五代目徳川綱吉の時代だそうです!300年以上続く家業を継ぐってどんな気持ちなんでしょうか?とにかくすごいことですよね~。伝統を受け継ぎつつ、新しいことにも挑戦している康衛くんの醸す一白水成の今後がますます楽しみです。

 

今回の料理は僕のお袋の実家の秋田ということもあって、ずいぶんと懐かしい料理を久しぶりに作れて楽しかったです。しばらく顔を出してない秋田の田舎に遊びに行きたくなりました。

 

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