「日本全国食べ歩かない」第八歩目 「群馬県 浅間山」其の弐
「日本全国食べ歩かない」第八歩目「群馬県 浅間山」の続きです。
割鮮 ギンヒカリ 岩魚 大根 大葉 卸生姜
ギンヒカリとは群馬の水産試験場が育成開発した日本一と呼ばれる最高級ニジマスの名前です。通常ニジマスの養殖は2年を過ぎて大きくなると身質が悪くなるのだそうですが、このギンヒカリは2年を超えても肉質の低下のないものを選抜育成したものです。
サーモンのような色ですが脂っこくなく、しっとりとした身と食感でキメも細かくて美味しいです。
そしてイワナのお造りも。シコシコした歯ごたえと滋味な味わいで、ギンヒカリとはまた違ったテイストが味わえます。
お客様からリクエストがあったので、おまけでギンヒカリの皮をパリッと炙りました。なかなかの酒のアテです。
薫酒 岩魚骨酒
薫酒(くんしゅ)という名で、先ほどの刺身で使ったイワナの骨を干してじっくりと炙り、浅間山の純米大辛口を燗にして骨酒に。フグのひれ酒のような香ばしい香りで、杯が進みます。本来は丸のままのイワナでやりますが、今回は骨のみで。
焼物 上州すき焼 上州牛 下仁田葱 玉蒟蒻 春菊 焼豆腐 玉子
群馬県はすき焼きの食材の県内産自給率100%を今おしてます。程よい脂ののった上州牛に、甘みのある下仁田葱、そしてしっかりと味のある蒟蒻、群馬県産の豆腐に玉子と。割り下はしっかり味にして玉子をたっぷりと絡めて食べてもらいました。
上州牛旨いっすね~。
飯物 ひもかわうどん
群馬県桐生市の名物ひもかわうどんです。きしめんのようなうどんですが、それよりもっと幅広です。一度、茹でてから氷水でしめるとチュルンとしたのど越しとシコシコした食感がクセにある味です。今回は先ほどのすき焼きの〆として召し上がって頂きました。
香物 忠治漬
こちらも群馬県の桐生市の忠治漬本舗さんの忠治漬。いわゆる山葵漬ですが、白瓜が入っています。静岡あたりの山葵漬よりも甘みがあるので味もしっかりと出ていて、さらに白瓜のコリコリした食感があり、酒のあてに良いです。山葵漬が苦手な方でも食べやすいのでは。
忠治漬の名前の由来は国定忠治からきているそうです。
土産 舞茸御飯
今回、これだけではと思い群馬産の舞茸をふんだんに使った舞茸御飯をお土産に皆さんにお持ち帰り頂きました。写真はないんですが(汗)
群馬は舞茸の生産も盛んで、舞茸センターなんて所があったり、学校の給食に舞茸御飯が出たりするそうです。
今回の会は料理の品数はいつもより少ないものの、ボリュームは結構ありました。ま、すき焼きがメインって感じでしたからね。ギンヒカリのクオリティの高さにもびっくりでした。
お酒の浅間山は皆さん会の初めの方は生の大吟にごりが美味しいと言ってましたが、後半になるにつれ火入れの純吟が美味しいと、生と火入れの差みたいなものにも気づいてもらえました。こればっかりは呑み続けないと中々分かりづらいですからね。
櫻井社長には草津温泉の観光話などもしていただき、皆さん今後の旅行候補のひとつになったみたいです。まだまだ造りの途中のお忙しい中、櫻井社長ありがとうございました。
次回の「日本全国食べ歩かない」第九歩目の「秋田県 一白水成」の会は4/14ですが、おかげ様で満席となりました。ありがとうございます。5月以降の「食べ歩かない」はまだ未定ですが、今後ともよろしくお願いいたします。
酒と鮓 梅軒
「日本全国食べ歩かない」第八歩目 「群馬県 浅間山」其の壱
定期イベント「日本全国食べ歩かない」第八歩目の「群馬県 浅間山」の会を先日行いました。群馬県の長野原町にある浅間酒造さんは、草津温泉にほど近いところにあります。草津温泉といえば映画テルマエ・ロマエなどでも出てきた湯畑が有名ですね。
さて、今回の浅間山のラインナップ。浅間山大吟醸斗瓶囲いにごり(非売品)・純吟改良信交・純吟純米うららか・純米大辛口です。
酒の味は、キリリとしたキレのあるすっきりタイプの酒です。食中酒として飽きのこない味わいです。今回は非売品の大吟にごりも持ってきていただき、お客様も大喜びでした。
お越しいただいたのは浅間酒造の櫻井武社長(写真右)。地元、草津ではホテルや観光センターなども経営されているやり手社長さんです。ちなみにホテルは草津温泉の「ホテル櫻井」さんです。僕も泊まらせてもらったことありますが、きれいな居心地のいいホテルです。料理も美味しいですよ。草津の湯畑から徒歩10分ほどのところにあります。
先付 焼まんじゅう 浅間山サイダー
どこにもっていくか悩んだ焼まんじゅうですが、最初にしてみました。群馬といえば焼まんじゅうというくらい、お祭りなどでもよく見かける郷土料理です。
肉まんの皮の部分だけのような生地に、味噌と醤油、砂糖を混ぜて甘じょっぱいタレを塗って香ばしく焼いたものです。素朴なほっこりと懐かしい感じのするおやつって感じですね。最近では中身にあんこが入ったものもあるそうです。
おやつ的な焼まんじゅうに合わせて、浅間山の仕込み水で造った浅間山サイダーを合わせてみました。昔のラムネとサイダーの中間のような味わいで、こちらも懐かしさを感じます。
前菜 刺身こんにゃく 酢味噌
群馬はこんにゃくの生産量日本一です。そして刺身こんにゃくの発祥もやはり群馬だそうです。通常のこんにゃくよりも柔らかめに、シコシコした歯ごたえの刺身こんにゃくには青海苔を入れています。刺身こんにゃくは、その食感から「山ふぐ」なんても呼ばれます。
吸物 とんとん汁 上州麦豚 豚摘入 大根 人参 蒟蒻 牛蒡 じゃが芋 里芋 椎茸 占地 榎茸 玉葱 下仁田葱 絹鞘 浅葱
前橋の料理人さんたちが前橋の名物料理にと考えて作ったのがこの「前橋とんとん汁」。簡単に言えば豚汁なんですが、きのこ類はバターでソテーしてから入れたり、赤みそと白みそをブレンドしたりとちょっと洋風のテイストのある超具沢山な豚汁です。ほぼおかずのようなこの豚汁はお客さんにも好評でした。
また群馬は畜産が多く、鶏・豚・牛と色々なブランドがあります。今回は上州麦豚を使用。甘みのある脂としっかりした味の豚肉です。
其の弐へ続く…
酒と鮓 梅軒
参加者募集!第九歩目「日本全国食べ歩かない」「秋田県 一白水成」
4月の第九歩目のイベント「食べ歩かない」が決まりました。
秋田県の五城目町にある「福禄寿酒造」さんで醸される、「白」い米と「水」から「成」る「一」番旨い酒という思いで「一白水成」と名付けられたこのお酒は、米の旨味と控えめな香りの食中酒向きのお酒です。
会の当日は渡邊康衛社長がお越しになります。渡邊くんは秋田の蔵元5社が集まって共同で1本の酒を仕込む「NEXT5」(一白水成・山本・春霞・ゆきの美人・新政)にも参加しており、秋田の酒業界をリードしていく存在のひとりです。今話題の秋田の酒の面白い話が聞けることと思います。
そして料理は秋田の郷土料理。秋田といえば、きりたんぽに比内鶏、ハタハタやしょっつる鍋、いぶりがっこに稲庭うどんなどが有名ですね。僕はおふくろの生まれが秋田なので、子供の頃から秋田の料理にはなじみがありますので、こちらもご期待を。
日時 4/14(土)18:00スタート 完全予約制
内容 「一白水成」呑み放題と秋田の郷土料理フルコース
会場 武蔵小山 梅軒カウンターにて
会費 1万円(税込/ご予約時に現金または振込にてお支払いお願いいたします)
酒と鮓 梅軒
3/25(日)西麻布にて日本酒イベントやります
僕の後輩が企画した日本酒のイベント【今さら聞けない酒の会(仮)】にて講師(なんちゃって)をすることになりました。
この会は「日本酒の可能性、常識・非常識などをコンセプトに、特にいま日本酒に興味が出てきた初心者でも気軽に楽しめる酒の会」だそうです。
僕はそこで日本酒の話をするわけですが、まぁ日本酒の堅苦しい情報的なこと(本やネットを見ればわかること)は簡単に、どちらかと言えば楽しく呑むこと・呑み方などの提案ができればと思っています。
ざっくりと考えている今回の会の内容は、今まであまりしてこなかった呑み方(日本酒のロックやソーダ割り、違う日本酒どうしのブレンドなど)や、もちろん定番のきき酒や味わいについて、グラスや温度の違いで同じ酒なのに変わる味の呑み比べなど…です。もちろん、酒に合わせたつまみもお出しします。
今後も定期的に開催予定とのことで、いずれは蔵元見学ツアーや蔵元さんにお越しいただいての日本酒造りの話、さらにはこの会オリジナルの日本酒を造れたら…などを企画しているそうです。
最近、日本酒に興味をもってきた方も、元々日本酒大好きな方もよろしければ是非ご参加ください。
そして、すいませんがこの日は僕が講師で出てしますので、梅軒の夜の営業はお休みさせて頂きます。
【今さら聞けない酒の会(仮)】
開催日 3/25(日)17:00開場 17:30スタート 20:00くらい終了
場所 西麻布 【霞富士】 港区西麻布1-10-7ウエストフローラAZABU1F(上の写真が入口です)
会費 ¥5000(税込)
内容 日本酒4~5種類+酒のあて数種+ごはん
予約 霞富士 03-6447-1235 担当:飯塚まで
会場の都合で20名ほどで締切になるそうです。完全予約なので、ご予約はお早めにお願いいたします。
酒と鮓 梅軒
今のおまかせコースの料理内容
ここ最近はイベントの料理ばかりUPしていたので、今日は久しぶりに通常のおまかせコースの今の献立をご紹介。
まだまだ寒いのが続くので、最初は温かいもので。岩水雲(いわもずく)と芽かぶの雑炊です。初めに軽くごはんを少し胃に入れておくと悪酔いしにくいかなと。
その後は酒のアテ、酒肴の盛り合わせ。手前右から時計回りに牡蠣の生姜オイル漬・赤貝肝煮・赤海鼠(なまこ)酢・鮟肝ぽん酢・海藤花(かいとうげ)塩辛・ぎばさ・ピーマンとガリと昆布佃煮の和え物です。
海藤花は真たこの卵の塩辛です。独特の香りと風味で酒が進みます。煮物で出ることが多いタコの卵ですが、トロっとした食感の塩辛も美味しいですよ。タコは巣穴の天井に卵を産み付けますが、それが藤の花が咲いたような感じに見えることからこの海藤花の名が付きました。
ぎばさは秋田でよく食べられるネバネバした海藻です。粘りも強くクセのない海藻の味が美味しい珍味です。
お造りは天然寅河豚鉄刺(てっさ)。十分寝かした寅河豚は味わい深い一品です。
フグのひれ酒のご用意もありますよ。
そして牡蠣の茶碗蒸し春菊餡かけです。プリっとした牡蠣と蕪、そして青い香りの春菊がよい相性です。香りで上から柚子を振ってます。
写真の握りは左下より時計回りに皮剥(かわはぎ)肝のせ・小鰭(こはだ)・鮃(ひらめ)・真鯛万年味噌のせ・春子(かすご)です。
写真にはありませんがこの日はこれの他に、赤貝・青柳・帆立磯部・鯵・鰯・疣鯛・金目鯛・のど黒・縞海老海老味噌魚醤・墨烏賊いしる・厚焼玉子などから、なんだかんだと大体12~13貫くらいお出ししています。
コースの内容は季節や海の状態で変わりますが、大体こんな感じで¥6,000(税サ別)です。おなかの空いている方はコースがお得なのでおすすめしています。
アラカルトでは寒い日が続いているので、ひとり用の小鍋も始めました。小鍋は湯豆腐・寅河豚てっちり・蟹鍋などです。こちらも是非ご利用ください。
酒と鮓 梅軒
「日本全国食べ歩かない」第六歩 「東京都 江戸開城(東京港醸造)」其の弐
「食べ歩かない」第6歩「東京都 江戸開城」東京港醸造さんの会の続きです。
割鮮 鯉洗い 鯉 煎酒 酢味噌 茗荷 大葉 大根 卸生姜
江戸時代に真鯛と並んで人気だった魚が鯉。皆さん泥臭いというイメージがある方が多いですが、ちゃんと泥を吐かせたりしたものはまったく臭みなんて無く、脂ののったしっかりとした身の食感で美味しいんです。
鯉は小骨があるので薄く切るか、かるく骨切して氷水で洗いに。
当時は醤油ではなく酢味噌で食べるか、煎り酒につけて食べるかでした。煎り酒とは梅干と酒、鰹節、昆布などを一緒に火にかけ、少し煮詰めて漉したものです。梅の風味と塩分のきいたさっぱり味のつけタレです。さっぱり味好きの江戸っ子のお好みの味って感じですね。
鯉は川魚なので、もちろん泳ぎで仕入れます。鯉は丈夫で真水で運べたので、冷蔵設備や輸送に時間のかかった当時でも鮮度の良い状態で仕入れることが可能だったので、より重宝されたのではと思います。
卸すときには一度、包丁のみねで頭をぶっ叩いて脳震盪をおこさせてから〆て卸します。
ちなみに鯉こくを作るときは内臓と鱗はついたままが基本です。鯉のウロコは火を入れると柔らかいので食べれるんです。ま、大半の方にはウケはよくないんですが…(泣)
焼物 牡蠣田楽 牡蠣 蕗味噌
昔は江戸前の海でも牡蠣は獲れたそうです。今とはずいぶん違いますね。当時は埋め立てもなく、海も綺麗だったんでしょう。鱧や鮪なんかもあがったそうです。
牡蠣は鍋で乾煎りし、串に刺して蕗味噌を塗りサッと焼き上げます。
蕗味噌と牡蠣の濃厚な感じが酸味のあるパラカセイといい相性でした。
酢物 占地茸海苔酢 占地 もみ海苔 三杯酢
シメジのシンプルな酢の物です。海苔の香ばしい香りとミネラル感にクセのないシメジの味が良いです。多分当時は本シメジだったので、もっと味わい深いものだったと思いますが、今では本シメジはまず手に入らないので一般的に出回っているブナシメジで作りました。
煮物 大根煎出し 大根卸 浅葱
これは大根を生のまま胡麻油のみでじっくりと揚げて火を通し、上に大根おろしと浅葱をのせ醤油をかけただけという、これぞ江戸料理というシンプルで滋味深い一品。写真では伝わらないですが、生のまま揚げた大根は独特の食感で、いうなれば大根のコンフィという感じです。さらに大根の上にまた大根(おろし)をのせているのも、火の通った大根の甘い感じと大根おろしの生の感じとふたつの大根の味わいがあるのも特徴的。また味付けが醤油だけってのも江戸っ子らしいですな。生の大根を揚げるという行為だけで火を入れるのは結構時間がかかります。
飯物 江戸鮓 鮪漬 小鰭酢〆 玉子巻 がり
江戸時代、関西のなれ鮓から派生してできた握り鮓はせっかちな江戸っ子には大変人気だったそうですが、当時はまだ米酢が高価なものだったのでなかなか庶民の口には入らなかったそうです。そこである人がなんとか安い酢を大量に造れないものかと考え、当時たくさん出ていた酒粕から酢を造ることを発明しました。これは色が赤っぽいので赤酢と呼ばれ、安価でそれでいて鮪などの味に合うということで庶民の間で人気になり、江戸の巷では握り鮓が大流行しました。この赤酢を発明した人こそあの「ミツカン」の創始者だそうです。スゴイねミツカン!この赤酢を使った庶民向けの握り鮓のシャリが赤いのに対して、高価な米酢を使ったシャリが「銀シャリ」と呼ばれる所以なのではと僕は考えます。
冷蔵設備のない当時、鮓のネタにはすべて処理が施されていました。火を通したり、酢〆したり、塩で〆たり、醤油で漬けにしたりと。少しでも涼しい所に置こうと、桶に入れたネタを井戸の中、水ギリギリのところまで下げて置いたりなどの工夫もしていたそうです。
写真わかりにくいですが、当時の鮓はお稲荷さんくらい大きかったそうです。ちょっと小腹がすいた時に屋台の鮓を2~3個食べたら十分だったのでは。そもそも1貫の「貫」は目方の「貫」だそうで、だいたい40~50gで今のお鮓の2個分くらいの重さです。そしてこの握り鮓は花街のおねぇさん方の手土産にも喜ばれたそうですが、お化粧をしたおねぇさん方には少し握りが大きかったらしく1貫を切って2つにしていたそうです。その名残が回転寿司などにある1皿2個(1貫の重さ=2個)のルーツだそうです。
鮪の赤身は叩きにして醤油漬けに。当時の鮪は安価で下魚でした。「おめぇ鮪なんか喰ってんのかよっ」って感じだったそうです。それを上手に美味しくしたのがこの漬けの握り鮓。これにより鮪も市民権を得たそうです(まだまだ赤身に限りますが)
コハダは塩で〆てから酢〆に。当時は2日間ほど塩で〆ていたらしく、非常にしょっぱいものだったそうです。今回はそこまではしませんが、軽く薄塩をして1日おき、酢で〆てみました。鮓に醤油を塗って出すというかたちにしていないので、元々の味をしっかりとつけてみました。
当時の江戸の鮓の絵です。下のほうに海苔巻きも見えますが、黄色の玉子巻が前面にあります。シャリに刻んだ干瓢と海苔を混ぜ、薄焼き玉子で巻いたものです。
今回はウチでいつも焼いている海老のすり身の入った厚焼玉子を薄く焼き、それで巻いてみました。お客さんのウケが非常に良かった一品です。子どもにも喜ばれそうな味です。
留椀 納豆汁 叩き納豆 小松菜 豆腐 芥子 江戸味噌仕立
江戸っ子一番人気の味噌汁がこの納豆汁だったそうです。叩いた納豆に江戸野菜でもある小松菜と豆腐を入れ、江戸味噌で味をつけ、風味に溶き芥子を少々。納豆はよく練ってから入れると香りと味がよく出て美味しいです。
今では造るところが少なくなった江戸味噌。味噌は本来「手前みそ」なんて言葉があるくらい普通に家で造るものでした。ウチの田舎でも大きな樽で毎年味噌を造っていました。ですが、仙台味噌など多くの味噌は発酵&熟成で食べられるまで1年以上の時間がかかるものが多く、当時の江戸の狭い長屋事情では1年もの間大きな樽を家に置いておくスペースがなかったのだそうです。そこで一般家庭に代わり味噌を造って売る味噌屋ができました。それでも江戸の庶民分の樽など1年以上置いておくにはかなりのスペースが必要です。そこで考えられたのが、少ない発酵時間で出来上がる味噌。そうすれば場所が少なくてもすぐに味噌ができるので、せっかちな江戸っ子にはありがたかったそうです。これが江戸味噌のはじまりだそうです。江戸味噌は通常の味噌よりもかなり多くの麹を入れ発酵させ、2週間ほどで食べられるようになります。発酵時間が短い分、賞味期限も短いですが当時はその短いサイクルが庶民の暮らしに合っていたのだと思います。江戸味噌の味はあっさりとした味で麹の甘みがほんのりとあるクセのない味噌です。
お香々 三ツ輪漬 大根 柚子 唐辛子
香の物ではなく、あえてお香々(おこうこ)と当時を想って書いてみました。
三ツ輪漬け(みつわづけ)という当時のお漬物です。大根、柚子、唐辛子の3つを輪切りにし、酒と醤油を煮切ったもので漬けたシンプルな漬物。食べるのは大根だけですが、柚子の酸味と香りがほどよく大根にしみて、唐辛子の辛味もいいアクセントになっています。酒のアテにもお茶請けにもよいこの漬物、個人的に気に入ってます。最近、店でこの漬物を刻んで細巻きにしてます。ちょっとした箸休めにも口直しにもなる細巻きです。
合計3回やらせていただいた今回の「東京都 江戸開城」の会。本当は東京23区で2件目の酒蔵だったのですが、会の最中にもう1件ある北区の丸真正宗さん(小山酒造)が今月いっぱいで日本酒の製造をやめられるというニュースが入りました。残念なお知らせです。23区では唯一の酒蔵になってしまった東京港醸造さん。新たな東京の味として頑張ってほしいです。
そして杜氏の寺澤さん、近いとはいえ造りの忙しい中の参加ありがとうございました。東京の酒ということで、参加された皆さんも興味深い話が聞けたと思います。
僕はといえば今回の江戸料理に関して、図書館などでいろいろ文献や本で調べて想像で作りましたが、非常に勉強になりました。シンプルながらも素材の組み合わせや調理法で奥深い味わいを出す江戸料理に日本料理の本質を垣間見れた気がします。
東京港醸造さんの会はまた秋くらいに開催したいと思っています。次回は「剣客商売」や「鬼平犯科帳」に出てくる江戸料理を再現した「池波正太郎の料理」なんかをやりたいですね~。
3月10日(土)の「日本全国食べ歩かない」第8歩目「群馬県 浅間山」の会にまだ少し空きがあります。ご興味ある方は是非ご連絡ください。
酒と鮓 梅軒