星鰈(ホシガレイ)
星鰈(ホシガレイ)という鰈の一種です。
あまり馴染みのない名前ですが、鰈の中では最高級品です。特に大きいものは値段も最高級です。鰈の中でも美味しいとされるマガレイやマコガレイなどよりも高値で取引されます。「幻のカレイ」なんて言われることもあります。
身はキメの細かい白身で上品な味わいです。マガレイがほうじ茶だとすると、マコガレイが緑茶、ホシガレイが玉露といった感じでしょうか。白身の鮓ネタではヒラメや真鯛よりも上という職人さんもいるほどです。漁獲量が少ないのであまり見かけることはないとは思います。代表的な産地は三陸方面が多いですね。
ホシガレイとよく似た魚でマツカワガレイという魚がいます。これも高値で取引されますが、マツカワもホシガレイも味は変わらないという方もいますが、僕は個人的にはホシガレイのが好きですね。いいマツカワに当たったことが無いだけかもしれませんが、どうもマツカワはホシガレイほどの上品さが無いような気がします。
ホシガレイはいつも河岸にあるという魚ではないので、もし飲食店さんで見かけたら是非食べてみてください。美味しいですよ。
追記:今日10月1日は「日本酒の日」です。僕の友人知人の蔵元さんたちも各地でイベントをやっております!今日は是非、日本酒で乾杯を!
酒と鮓 梅軒
天然鮎の季節が終わります
6月からいつも使いはじめる大分県日田の三隈川産の友釣り天然鮎ですが、もう終わりの季節になりました。
6・7月は塩焼で、8・9月はサイズが大きくなるので煮鮎でお出ししていました。
この煮鮎という料理はあまり見かけない料理ですが、これは日田の鮎料理の店「春光園」の親父殿に教えてもらった料理です。ウチはいつもココから鮎を送ってもらっています。マンガの「美味しんぼ」にも載った鮎料理の名店です。
鮎の季節になると三隈川付近では梁漁(やなりょう)をしていて、近隣の方が共同で梁を仕掛けるそうです。昔は梁をかけると大量の鮎が獲れたそうで、共同持ち主で分けてもそうとうな量だったそうです。持ちかえった鮎は塩焼や背越し(刺身)などにして食べたそうですが、毎日ずっと同じものを食べていると飽きてきます。そこで何か別の料理法はないかと考えたのがこの煮鮎だそうです。昆布出汁で炊いた鮎にぽん酢をかけて食べるので、サッパリとしていて何本でも食べられそうな味なんです。天然物だからこその味。シンプルな料理だから素材そのものの味に大きく左右されるので、養殖物では脂臭くてこうはいきませんな。
ウチではぽん酢に柚子胡椒と卸した胡瓜、刻んだ蓼の葉を入れてサッパリと青い香りをのせています。ワタのほろ苦い感じも日本酒によく合いますね。
鮎の季節が終わると夏が終わったな~って感じがします。また来年をお楽しみに。
酒と鮓 梅軒
蒸し蛤(はまぐり)の握り鮓
蒸し蛤(はまぐり)の握り鮓です。
蛤といえば桑名(三重)や鹿島(茨城)が産地として有名ですが、いまや日本在来の蛤はほとんどいません。だいたいがチョウセンハマグリの子を撒いて育ったものが「地蛤」という名で流通しています。日本在来の蛤は絶滅危惧種に指定されているそうです。河岸で流通している蛤のほとんどがこのチョウセンハマグリかシナハマグリです。チョウセンハマグリの殻はツヤがあるのに対し、シナハマグリの殻はツヤがないのですぐに見分けはつきます。味はチョウセンハマグリのが美味しいです。シナハマグリは大味で火を入れると硬くなりますが、その分チョウセンハマグリよりも安価です。
ウチではこの地蛤を使って蒸し蛤をお出ししています。煮蛤(炊いて味付けしたもの)の握りも美味しいのですが、少し硬くなってしまうので最近のマイブームはこの蒸し蛤です。蒸し立ての温かい蛤を握るので、蛤の磯っぽい香りと甘み、そして蒸し立ての柔らかさがシャリとよく合いますね。味はツメ(甘辛の濃いタレ)ではなく煮切り醤油を塗ってシンプルにお出ししています。あまり蒸し蛤はやってる店が少ないので、食べたことのない方は是非召し上がってみてください。シンプルに蛤の良さが味わえて美味しいですよ。
余談ですが、「グレる」という言葉の語源は蛤からきているそうです。蛤を逆さまに読んだ「グレハマ」という言葉を略して「グレる」になったそうです。蛤は「貝合わせ」という遊びがあるように、ペアになっている殻以外とはぴったりと形が合わないという性質があります。なので「逆さまにした蛤(ぐれはま)は合わない」ということから、「物事が食い違う=親の思いと食い違って子が育つ」という解釈になり「グレる=不良」という意味になったそうです。
普段使う言葉で食べ物が語源のものはかなりあります。これもまた追々書いていけたらと思っています。語源を知ると楽しいですよ。
酒と鮓 梅軒
コハダ(小鰭)
鮓の光物といえばやはり「コハダ(小鰭)」でしょう。僕も大好きなネタのひとつです。
実はこのコハダ、出世魚(大きさで呼び名が変わる魚)なんです。
新子(シンコ・赤ちゃん)→小鰭(コハダ・小)→ナカズミ(中)→鮗(コノシロ・大)です。ナカズミって言い方はあまり使いませんが、その他は河岸でもよく呼ばれています。コノシロのサイズになると大きいものは20㎝以上になります。
旬は夏の産卵が終わった秋~冬ですが、基本1年中出回っています。
特に鮓で珍重されるのが、生まれてすぐの数センチサイズのシンコです。河岸でも毎年初値は高騰しています。たしか今年の初値は1キロ10万円くらいだったと思います。どんなに安くても初値で5万を切ることはそうはないですね。ただ数週間もすればすぐに値は落ち着いてキロ数千円にはなりますが。
代表的な食べ方はやはり鮓ですが、その他にも「粟漬け(酢〆したコノシロに粟をまぶしたもの)」や酢の物なんかもあります。小骨が多い魚なので、あまり焼いたり煮たりはしません(天草地方では味醂干しにするそうですが食べたことはないです)。
昔の人はコハダを焼くと「人を焼いた臭いがする」といって嫌ったそうですが、焼いてみたことありますがそんなことはないですよ(笑)
ともあれ、これからがコハダの美味しい季節です。
酒と鮓 梅軒
スミイカ(墨烏賊)
スミイカです。まだこの時期でも新イカのサイズです。
夏の鮓ネタといえば「新子(コハダの子供)」と、この「新イカ」でしょう。
新イカは夏に生まれるスミイカの赤ちゃんです。爽やかな香りとサクッとした歯ごたえが美味しいイカです。鹿児島県出水市産が有名です。
かわって親イカは秋からが美味しい季節になります。親イカは身も厚く甘みもあります。ま、どっちもそれぞれ美味しいんです。
スミイカというくらいで、真っ黒な墨を吐きます。選ぶときはこの墨に粘りがあってツヤのある真っ黒のものがいいですね。
メニューにはのせてませんが、茹でた下足を握りでもお出しできます。サッと醤油を塗って炙ってもイイつまみですね。ご注文あればお出ししますよ~。
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