酒と鮓 梅軒(バイケン)

武蔵小山の鮓(すし)割烹と日本酒の店です【住所】目黒区目黒本町5-16-3☎03-5708-5542 水曜定休

天然鮎の季節が終わります

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6月からいつも使いはじめる大分県日田の三隈川産の友釣り天然鮎ですが、もう終わりの季節になりました。

6・7月は塩焼で、8・9月はサイズが大きくなるので煮鮎でお出ししていました。

この煮鮎という料理はあまり見かけない料理ですが、これは日田の鮎料理の店「春光園」の親父殿に教えてもらった料理です。ウチはいつもココから鮎を送ってもらっています。マンガの「美味しんぼ」にも載った鮎料理の名店です。

 

鮎の季節になると三隈川付近では梁漁(やなりょう)をしていて、近隣の方が共同で梁を仕掛けるそうです。昔は梁をかけると大量の鮎が獲れたそうで、共同持ち主で分けてもそうとうな量だったそうです。持ちかえった鮎は塩焼や背越し(刺身)などにして食べたそうですが、毎日ずっと同じものを食べていると飽きてきます。そこで何か別の料理法はないかと考えたのがこの煮鮎だそうです。昆布出汁で炊いた鮎にぽん酢をかけて食べるので、サッパリとしていて何本でも食べられそうな味なんです。天然物だからこその味。シンプルな料理だから素材そのものの味に大きく左右されるので、養殖物では脂臭くてこうはいきませんな。

 

ウチではぽん酢に柚子胡椒と卸した胡瓜、刻んだ蓼の葉を入れてサッパリと青い香りをのせています。ワタのほろ苦い感じも日本酒によく合いますね。

 

鮎の季節が終わると夏が終わったな~って感じがします。また来年をお楽しみに。

 

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蒸し蛤(はまぐり)の握り鮓

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蒸し蛤(はまぐり)の握り鮓です。

 

蛤といえば桑名(三重)鹿島(茨城)が産地として有名ですが、いまや日本在来の蛤はほとんどいません。だいたいがチョウセンハマグリの子を撒いて育ったものが「地蛤」という名で流通しています。日本在来の蛤は絶滅危惧種に指定されているそうです。河岸で流通している蛤のほとんどがこのチョウセンハマグリシナハマグリです。チョウセンハマグリの殻はツヤがあるのに対し、シナハマグリの殻はツヤがないのですぐに見分けはつきます。味はチョウセンハマグリのが美味しいです。シナハマグリは大味で火を入れると硬くなりますが、その分チョウセンハマグリよりも安価です。

 

ウチではこの地蛤を使って蒸し蛤をお出ししています。煮蛤(炊いて味付けしたもの)の握りも美味しいのですが、少し硬くなってしまうので最近のマイブームはこの蒸し蛤です。蒸し立ての温かい蛤を握るので、蛤の磯っぽい香りと甘み、そして蒸し立ての柔らかさがシャリとよく合いますね。味はツメ(甘辛の濃いタレ)ではなく煮切り醤油を塗ってシンプルにお出ししています。あまり蒸し蛤はやってる店が少ないので、食べたことのない方は是非召し上がってみてください。シンプルに蛤の良さが味わえて美味しいですよ。

 

余談ですが、「グレる」という言葉の語源は蛤からきているそうです。蛤を逆さまに読んだ「グレハマ」という言葉を略して「グレる」になったそうです。蛤は「貝合わせ」という遊びがあるように、ペアになっている殻以外とはぴったりと形が合わないという性質があります。なので「逆さまにした蛤(ぐれはま)は合わない」ということから、「物事が食い違う=親の思いと食い違って子が育つ」という解釈になり「グレる=不良」という意味になったそうです。

普段使う言葉で食べ物が語源のものはかなりあります。これもまた追々書いていけたらと思っています。語源を知ると楽しいですよ。

 

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コハダ(小鰭)

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鮓の光物といえばやはり「コハダ(小鰭)」でしょう。僕も大好きなネタのひとつです。

実はこのコハダ、出世魚(大きさで呼び名が変わる魚)なんです。

新子(シンコ・赤ちゃん)→小鰭(コハダ・小)→ナカズミ(中)→鮗(コノシロ・大)です。ナカズミって言い方はあまり使いませんが、その他は河岸でもよく呼ばれています。コノシロのサイズになると大きいものは20㎝以上になります。

旬は夏の産卵が終わった秋~冬ですが、基本1年中出回っています。

特に鮓で珍重されるのが、生まれてすぐの数センチサイズのシンコです。河岸でも毎年初値は高騰しています。たしか今年の初値は1キロ10万円くらいだったと思います。どんなに安くても初値で5万を切ることはそうはないですね。ただ数週間もすればすぐに値は落ち着いてキロ数千円にはなりますが。

 

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代表的な食べ方はやはり鮓ですが、その他にも「粟漬け(酢〆したコノシロに粟をまぶしたもの)」や酢の物なんかもあります。小骨が多い魚なので、あまり焼いたり煮たりはしません(天草地方では味醂干しにするそうですが食べたことはないです)。

昔の人はコハダを焼くと「人を焼いた臭いがする」といって嫌ったそうですが、焼いてみたことありますがそんなことはないですよ(笑)

ともあれ、これからがコハダの美味しい季節です。

 

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能登のゴロいか

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石川県能登の「ゴロいか」です。

ゴロいかとは何ぞやと思われるかもしれませんが、イカの種類ではありません。

ゴロ=内臓のことで、要はスルメイカの丸干しです。

醤油で味付けしたスルメイカを肝の入ったまま半なまの丸干しにした物です。これをサッと炙って、薄くスライスしてお出ししています。

半なまなので、するめ(あたりめ)ほどカチカチ感はなく、肝の部分が入ってるので酒に合う!味は少ししょっぱめですが、それがなおさら酒に合う!これ1匹いれば、そうとう酒が呑めます(笑)

個人的にはこれに燗酒を合わせるのが好きです。八代亜紀さんも同意してます。

 

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スミイカ(墨烏賊)

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スミイカです。まだこの時期でも新イカのサイズです。

夏の鮓ネタといえば「新子(コハダの子供)」と、この「新イカ」でしょう。

新イカは夏に生まれるスミイカの赤ちゃんです。爽やかな香りとサクッとした歯ごたえが美味しいイカです。鹿児島県出水市産が有名です。

 

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かわって親イカは秋からが美味しい季節になります。親イカは身も厚く甘みもあります。ま、どっちもそれぞれ美味しいんです。

スミイカというくらいで、真っ黒な墨を吐きます。選ぶときはこの墨に粘りがあってツヤのある真っ黒のものがいいですね。

メニューにはのせてませんが、茹でた下足を握りでもお出しできます。サッと醤油を塗って炙ってもイイつまみですね。ご注文あればお出ししますよ~。

 

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秋刀魚(サンマ)の時期ですが・・・

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秋です、秋刀魚です。

個人的に好きな焼魚の1位が秋刀魚です。あの脂ののった感じ、わたの苦み、たいして骨を気にせず食べられるし、酒でもごはんでもイケる万能さ、そして値段ともう完璧じゃ~ないですか!(ちなみに2位は鮎です)

 

秋刀魚は夏前に黒潮にのって北上してオホーツク海で太り、夏の終わり頃から寒流にのって南下してきます。南下する際に身体に蓄えたあの脂を使いながら、遠く近畿・九州まで行きます。なので、脂ののった秋刀魚は三陸・金華湾あたりまでとよく言われます。ニュースなどで「銚子沖で今年も秋刀魚漁が…」なんてのがありますが、北海道・三陸物よりも脂は落ちてます。「あんまり脂強いのは苦手」という方には丁度いい頃合いかと。さらに南下してすっかり脂が抜け落ちた物は紀州あたりでは丸干しにしたりします。これはこれで旨いです。

 

そんな秋刀魚ですが、今年も昨年に続きさらに不漁です(泣)

目黒の秋刀魚祭も今年はついに生サンマの確保ができず「去年の冷凍物」を使ったそうです。

原因は「水温の温暖化」と「中国・台湾の乱獲」と言われています。

ここ数年、いろんなニュースでも取り上げられていますが、「南の魚がこんな北で見つかった」なんてのが多いです。確実に日本沿岸の海水温が上がっている証拠でしょう。秋刀魚は冷たい海水を好むので「温度が上がった日本沿岸に近づいてこない」のが現状らしいです。加えて日本食バブルの中国・台湾での乱獲もそれに拍車をかけているようです。

河岸で買物をしているとよくわかります。例年までは1本200gくらいの大きな脂ののった秋刀魚が8月の根室・釧路沖では獲れていたのが、去年あたりから1本140gくらいの物がほとんどになってしまいました。やっと大きい物を見つけてもせいぜい160gくらいしかありません。残念な話ですが、獲れた物の中でイイ物を見つけて商売するしかないです…。

 

日本沿岸の海(気候)が崩れているのは、河岸で実感します。「えっ、この時期にこの魚獲れたの?」とか「まだこの魚獲れてるの?」など、昔の旬の時期からのズレを感じます。なにかやったらこのズレは止まるもんなんでしょうか?日本は四季を大切にする国ですからね、このままズレてったら風情が無くなるな~(悲)そして俺の秋刀魚が…

 

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アズキハタ(小豆羽太)

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アズキハタ(小豆羽太)という魚です。高級魚のひとつです。

 

よく似た魚でキジハタというのがいます。関西ではアコウと呼ばれる魚ですが、そちらはさらに超高級魚になります。

アズキハタは刺身でも煮ても焼いても良しで、カマや頭も美味しい魚です。今回のアズキハタは京都舞鶴です。

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↑キレイな白身の魚です。

  

僕が10年ほどいた沖縄でも、アズキハタはよく獲れました。向こうではハタのことは「ミーバイ」と呼んで高級魚の部類に入りますが、全然味が違いますね。

沖縄の海は前にもお話した内海ではなく、海に流れ込む大きな河川もないし、寒流と暖流がぶつかる場所でもないため海が肥沃ではありません。しかも気温も高いので、総じて魚の身が柔らかいというか、メチョっとしてるというか…脂もないし…磯臭いし…、漁師の魚の〆方も下手だし…あまり刺身には向かないですね。揚げたりする中華とかには向くのでしょうが、和食では使いづらいです。環境が違えば同じ魚でも全く違う味になるということを勉強しました。

  

今回のアズキハタは小ぶりですが、活け〆物(泳いでいるのを河岸で〆てもらう)なので身もしっかりしてて美味しいですよ。

 

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